さて今日も俺の話を書くか。俺の腕時計がどうにも調子が悪いのだ。とりあえずほっとくと動かないのだけれども、竜頭を動かすとたまに動きだしたりする。そういうことがあるので俺はたまに竜頭を動かしてみるのだけれども、この竜頭がまた固く、爪を立てたところでなかなか引き出せないので俺の右手の親指の爪ばかりがパイ皮のようにぽろぽろと剥けて傷んでいく。いまのところ爪の先端中央部分に少しくぼみがある程度だが、こんな暮らしを続けていればくぼみはどんどん深くなって溝になり、俺の親指は両端だけを耳状に残したウサギさんみたいな形状になっていくに違いないのだ。というかさっさと修理に出せばいいんだが俺がビックカメラの時計カウンターに行くたびに急に時計が動き出すかそうでないときは受付がすでに終わっていて、そうは問屋がおろさない感じであるのだ。でまあ行くたびにそんな具合で、時計が動き出すか受付が終わっているか、1/2の確率でどちらかであるわけなのだが、それがどちらであるかは俺が実際にビッグカメラエスカレーターを6階まで昇って時計カウンターの前まで行くまでわからないので、つまり俺が仕事を終えて大森から有楽町まで電車に揺られている間の俺の時計事情というのは「時計が急に動き出すことと時計カウンターがすでに閉まっていることが混ざっている状態」であるといえるのだ。そして俺が時計カウンターに着いた瞬間に、時計が動き出した状態、あるいは時計カウンターが閉まっている状態に変化することになっている。そういう量子力学的世界観の元に俺の親指は着々とラビタイズ(ウサギ化)されていくのだ。




 7月に行ったBunkamura原田郁子ソロに出てた異常なドラマーが外山明だったことに1ヶ月以上たってから気づいた。一音一音が全て解釈を経由して叩き出されていくようなあのドラミングに、うへぇ変態だ!と思いながら俺の耳はずっとドラムに釘付けだったのだ。それで帰って調べたらphonoliteの外山明って人だというのは判明していたのだけれども、なぜかその外山明があの外山明と結びつかないまま今に至っていた。そうか外山明か。




 Shing02がすげえとかいまさら言うと恥ずかしいので言わないでおこうと思っていたのだが、歪曲の特に後半のほうが本気で物凄いので言わざるを得ない。14曲目のストリングスの繰り返しのフレーズにユニゾンで小さく鳴ってるシンセリードが、もう絶対にここでこの音入れようっていう発想は出ないわ、これは凄いわ、って思いながら会社から帰ってきたんだがいま聴き返すともっとマクロな視点で取り上げるべきところはたくさんあると思った。結局俺がいい音楽を褒めようとすると局所的でフェティッシュな断片の話になってばかりだ。
 改めて聴くとこれすっげえなあと思うのは12か。重厚な推進力のベースラインとコーラスの組み合わせの妙なんだけど、そのコーラスが3種類くらいのフレーズが組み合わさってて、おのおの全然雰囲気が違うのな。それを組み合わせてこういう空気感作るんだ!っていう驚き。ほかにもウワーって圧倒される曲が目白押しでほんといまさらだがShing02すげえ。


 あと俺はトラック原理主義でいまのところリリックを全然聴いてないので、トラックに飽きた頃に改めて聴いて一粒で二度楽しむ予定。007は二度死ぬ予定。